感謝の気持ちを、子ども・若者たちへ
名執雅子(なとり・まさこ)
私の誕生日は3月11日。ちょうど半世紀を生きて50歳となった日に、あの大震災が起きました。大人になってからの誕生日は殊更の感慨もなく、1年間を無事に生きてきたことに心の中で感謝し、産み育ててくれた母に「ありがとう」を伝える日でした。でも、51歳の誕生日からは、あの日の光景をまざまざと思い出す特別な日となり、突然日常が奪われ、悲しく辛い思いをされている方のことを思う日となりました。
それから10年、私の日常は相変わらず忙しく働くだけで過ぎていきましたが、法務省の仕事を辞してから、犯罪や非行をした人の更生と社会復帰を支援してくださる方々とのつながりが新たな形で始まりました。仕事や住まいの支援にとどまらず、その人に寄り添い、支え、孤立させないための取り組みは幅広く、在職中には知り合うことのなかったさまざまな分野の皆様が、それぞれの想いとやり方で、罪を犯した人の立ち直りを支えておられることには、いつも感銘を受けるばかりでした。その一方、自分自身は何の役にも立てていないという、もどかしい気持ちも感じていました。
そんな中、日本フィランソロピー協会の高橋陽子理事長とご一緒させていただく機会が続き、さまざまな要因から困難を抱える子どもや若者の「生きるを支える、育ちを支える、支える人を支える」誕生日寄付のことをお伺いしました。
在職中、少年院や少年鑑別所の勤務を通して出会った少年少女たちには、この環境の中でよく生き延びてきたと驚愕し、自分もこの環境で育っていたら同じことをしてしまったかもしれないと感じることもありました。災いも育つ環境も自分で選ぶものではありません。偶然かつ幸いにして自分が今、健康で幸せに日常を送っていられることへのささやかな感謝の気持ちと、地域の活動に携われていないことへの心苦しさを、子どもや若者のために地道に活動されている皆様に形にして届けてくださる誕生日寄付の存在をありがたいことと思っています。